「ITが苦手」で止まらないための、最初の一歩の選び方

「ITが苦手」で止まらないための、最初の一歩の選び方

ITが苦手だから業務効率化に踏み出せない。そんな方に向けて、専門知識がなくても始められる最初の一歩の選び方を紹介します。完璧を目指さず、小さく試して育てる発想です。

「業務を効率化したい気持ちはあるけど、ITが苦手で何から始めればいいか分からない」——相談に来られる方の多くが、まずこの言葉を口にします。決して怠けているわけではなく、むしろ「やらなきゃ」と思っているからこそ、踏み出せない悩みです。

その気持ちはよく分かります。私自身、もともとはITとは縁のない人間でした。理学療法士として13年間、医療の現場で働いてきて、パソコンは事務作業で触る程度。プログラミングの知識なんてゼロからのスタートでした。

それでも今、業務効率化を仕事のひとつにできているのは、特別な才能があったからではありません。現場で「これ、なんとかならないかな」と思った小さな作業を、ひとつずつ片付けてきただけです。今回は、その経験から見えてきた「最初の一歩」の選び方を紹介します。

「苦手」で止まる人と進む人の違い

ITが得意な人と苦手な人の差は、知識の差ではないことが多い、と感じています。

私が最初にやったのは、大それたことではありませんでした。医療現場では、患者さんごとのリハビリ実績をまとめた書類を毎月たくさん作る必要があります。当時はほぼ手作業で、名前やIDを1枚ずつ確認しながら印刷していました。これがとにかく時間がかかる。

「名前とIDを入れたら、あとは自動で書類ができないか」——その一心で、分からないなりにExcelをいじり始めました。最初はエラーばかり。それでも調べながら少しずつ進めて、最終的には「ボタンを押すだけで全員分が出来上がる」仕組みになりました。

このとき確信したんです。進む人は、知らないことがあっても止まらない。「とりあえずやってみて、分からなければ調べる」で前に進む。一方で止まる人は「全部理解してから始めたい」と考えがちです。でも、全部理解してから始められることなんて、ITの世界にはほぼありません。

最初の一歩で大事なのは、完璧な準備ではなく、「分からなくても進んでみる」という覚悟だけ。意外と、それくらいで十分なんです。

違いは知識ではなく姿勢
違いは知識ではなく姿勢

いきなり大きな仕組みを目指さない

ITが苦手な人がつまずく典型が、いきなり大きな仕組みを目指してしまうことです。「業務全体を自動化したい」「全部をデータで一元管理したい」と、ゴールを高く設定しすぎる。

気持ちは分かります。でも知識がない状態でそこを目指すと、どこから手をつければいいか分からなくなり、結局始められません。あるいは頑張って大きな仕組みを作ったものの、使いこなせずに放置——というパターンも、実際によく見ます。

私の最初の一歩も、さっきのリハビリ書類「だけ」でした。業務全体をどうこうしようなんて考えていなかった。目の前のいちばん面倒な1作業を、ただ楽にしたかっただけです。

だから、最初は思い切り小さくていい。

  • 紙の領収書をスマホで撮ってGoogleドライブに保存する、だけ
  • 取引先の連絡先をスプレッドシートに1ページだけまとめる、だけ
  • 毎日の売上を1行ずつメモする、だけ

「これくらいなら自分でもできそう」と思える小ささであること。これがいちばん大事です。

一番小さい一歩から
一番小さい一歩から

最初の一歩に向く3つの条件

「どこから始めればいい?」と聞かれたとき、私はいつも次の3つの条件を満たす作業を提案しています。

1. 頻度が高い、毎日触る作業

たまにしかやらない作業を選ぶと、習慣化する前に間が空いて忘れてしまいます。毎日、もしくはほぼ毎日触る作業を選ぶと、自然と慣れていきます。

私の場合も、毎日のように発生する書類作りだったから、嫌でも触ることになり、結果として早く慣れました。「毎日少しずつ触る」ことが、ITに慣れる近道です。

2. 失敗しても損失が小さい

最初は必ず失敗します。設定を間違える、入力を間違える、何か消してしまう——これは慣れる過程で誰もが通る道です。

だから、失敗しても大きな損失にならない作業から始めます。請求書づくりのように金額のミスが信用に直結するものより、メモ・整理・記録のように「間違えてもやり直せる」作業のほうが向いています。

3. 効果がすぐ実感できる

これがいちばん大事かもしれません。やった結果、すぐに「楽になった」と感じられること。

私のリハビリ書類は、それまで毎月かなりの時間を取られていた作業が、ボタンひとつで終わるようになりました。この「明らかに楽になった」という実感が、「次もやってみよう」という気持ちに直結しました。

逆に、頑張ったのに効果が分からない作業から始めると、続きません。最初の一歩こそ、「成果が見える」ものを選んでください。

最初の一歩に向く条件
最初の一歩に向く条件

分からないときは、AIに聞いていい

私が独学で始めた頃には無かったのに、今は当たり前になったものがあります。AIです。

「スプレッドシートで合計を出したいんだけど、どうすればいい?」「この設定の意味が分からない」——こうした質問を、ChatGPTやClaudeに普通の言葉で投げれば、丁寧に教えてくれます。専門用語を知らなくても大丈夫。「初心者にも分かるように」と一言添えれば、噛み砕いて説明してくれます。

正直に言うと、当時これがあれば、私はもっと早く・もっと楽に進めたと思います。「分からないことを誰に聞けばいいか」が最大の壁でしたが、今はその壁がかなり低くなっています。一人で学ぶというより、AIと一緒に学ぶ感覚で進められる時代です。

ただし、AIの答えは間違っていることもあります。お金や法律に関わる内容は、最終的に専門家や公式情報で確認する。それ以外の細かい操作は、気軽に聞きながらで大丈夫です。

まとめ

ITが苦手で止まってしまうのは、知識がないからではなく、最初の一歩が大きすぎるからです。私自身、医療現場で目の前の面倒な書類作り「だけ」から始めました。一番小さな作業を、「毎日触る」「失敗しても損が小さい」「効果がすぐ実感できる」の3条件で選んで始めれば、無理なく続きます。

分からないことは、AIに気軽に聞きながら進めて大丈夫。完璧に理解してから始める必要はなく、進みながら覚えていけば十分です。「分からなくても進んでみる」というスタンスだけ持っていれば、ITは少しずつ味方になっていきます。何の知識もなかった私でも、そうやってここまで来られました。

「自分の業務だと、どこから始めるのがいいか分からない」と感じたら、お気軽に声をかけてもらえればと思います。日々の作業を一緒に見ながら、無理のない最初の一歩を一緒に決められます。


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